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第37回 your place 10
曇り空。空は曇っていた。俺はたたずんでいた。たまにこういう風になる。現実を見てしまう。もうどこにも行くあては無く、その辺に生きている奴らと同じような人生をたどらざるを得ない。いずれにしても、後20年もすればそうなることはわかっていた。それでも無理やり”やりたいこと”を作り、その夢を追いかけてきた。俺は他の奴らより才能があると信じていた。俺にしか出来ないことがあると信じていた。結婚して丸くなった奴をさげすんでいた。嘲笑していた。俺は違う。そう思っていた。俺は年収5百万円すらなかった。女は俺をほめてくれた。いや、女だけが俺をほめてくれた。それ以外の人間で俺をほめてくれるのは俺だけだった。
腕に注射をし、床に倒れるように崩れ落ちた。壁と身体の間に隙間があった。天井が果てしなく遠くに感じ、その真ん中から誰かがのぞいていた。俺のことを笑っていた。そいつの顔半分が急にゴムのように伸びた。やられた、と思った。突然景色が白黒になった。俺は必死に目を閉じようとしたが、俺にはまぶたが無かった。穴の開いた頬からとめどなく涙があふれ、俺は友人に裏切られた。このまま夜が永遠に続くことを祈った。階段はらせん状にどこまでも続いていた。さっきの奴の後姿を見た。笑いが止まらなかった。涙が止まらなかった。ど、ど、どこにいる。寿命が尽きた電球のように、全てはゆっくりと闇に包まれた。(2007.8)
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