第38回 your place 11

俺は暗闇の中にいて夢を見ていた。俺は何か身に覚えの無いことで追い詰められていた。俺は法律に違反したらしかった。俺は酔っていて覚えていなかった。俺はいつもそういう立場だった。夢でも現実でもいつも同じだった。俺は虐げられていた。俺は社会のシステムに、知人に、俺と関わるあらゆる人間に見放されていた。俺のせいだけではなかった。俺の前にいる人間は何かに操られているかのように俺を罵倒した。俺はそいつの言葉の半分もわからなかった。人を恨む言葉を知らなかった。俺はどこかに置き去りにされた気分になっていた。吐き気をもよおしてきた。そいつはなおも声を荒げていた。息がくさかった。俺はめまいを感じその場に倒れそうになった。突然、そいつはそれを察したかのように声を弱め、俺を気遣う発言を始めた。俺は偽装の感情に操られ、倒れることが出来なかった。俺は涙を流すことも出来なかった。空を見上げ、太陽を見つめれば全てが真っ白になって消えてしまうのではないかと思った。俺は少し顔を上に上げた。太陽を探したがどこにもなかった。



俺は太陽の代わりにガラスの板を見つけた。俺はそれを拾い上げた。それは透明で手をかざせば通り抜けられそうに純粋だった。俺は何かに救われた気がした。そいつはそれに気づいた。そして、また恐ろしい罵倒を再開した。俺は咄嗟にガラスを自分の前にかざし、そいつとの間に壁を作った。ガラスは純粋すぎて何の役にも立たなかった。そいつの声はガラスをものともしなかった。俺は吹き出る汗を止めることが出来なかった。数秒後に俺はガラスを床に落とし、その上に自分も突っ伏してしまうのではないか、そんな妄想に襲われた。ふと、なぜガラスなのか、という思いがよぎった。なぜ、こんなにも恐ろしいほど透明なのかと思った。俺はガラスの両端を持ったまま水平にした。そいつのつばが俺に直接飛んできた。それでも俺はガラスを戻さず、水平のままに保っていた。そして。世界中のどんな憎悪よりも早く、そのガラスをまっすぐそいつの喉につきたてた。ガラスはそいつの皮と肉のみならず、骨にさえつまずきもせず、向こう側に突き抜けた。そいつの首はガラスの上を俺の方に向かって転がり、そして俺の方で一度バウンドしてから地面に落ちた。あたりが真っ赤に染まった。胴体から切り離された首の断面はどくどくと脈打っていた。太陽はここにあった。(2007.9)

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