第十一回 お前は膿をだきしめていない

つい先日、池袋手刀でライブをしました。ら、久し振りにいいバンドに出会えました。と・・・・その前に、ここでハッキリキッパリ言っておく。俺は自分の「好き嫌い」に自信を持っている。人を見る目も、その肉声を聴く耳も、まだ決して死んではいない筈だ。見た目や技術といった表層的なものにとらわれてボケた評価・判断を下す連中は、そういう意味では死人である。俺は「どうでもいい」という言葉が大嫌いだ。俺の中には「どうでもいい」事など殆んど無い。「諦念」などという悟りぶった思考は、結局は楽したいだけでこだわりの無いゴミ人間による、合理的逃避に過ぎんじゃないか。どうでも良くないからこそバンドをやってるし、どうでも良くないからチマチマ小銭稼いで生きてるんだろうし。どうでも良かったら乞食になりゃいいんだ。自殺すりゃいいんだ。でも、どうでも良くないからしないよ。どうでもいい訳無いもん。現世に未練タラタラだ。やりたい事は未だ尽きない。やれてない事諦められん。あれも駄目だしこれも駄目だ。あのままじゃ良くない。このままじゃいかんてば。そうやって信念主張を頑なに曲げず、意地を張りっぱなしで居る事で、当然けむたがられ、段々と周りから距離を置かれ、実弟にまで苦笑される程の「徹底した核」を持つ俺(現実として、そういう兄のおかげで弟は、兄が幻滅してポイ捨てした女を「お下がり」として拾い上げ、ホクホクと無節操に付き合えてる現在があるわけだから、兄としては感謝して欲しいのですが・・)。そんな俺なんですが、バンドの演奏技術に関しては正直、どうでもいいんじゃねえのか?と言うか、大して必要ねえだろ?と、思ってしまうのである。だからこそ、器用なだけで本質度外視の偽物バンドが俺の目・耳をチョチョイと誤魔化す事は絶対に出来ない。俺はちゃぁぁぁんと見て、ちゃぁぁぁんと聴いとるよ。ルックスやファッションで30年前だか40年前だかの雰囲気だけをせっせとこさえて再現して、主張も鬱積したモノも実際の所はカケラも無く、先輩後輩単純馬鹿同士でスポーツマンシップにのっとった(文字通りの)体育祭の中、内輪でビール乾杯して騒いでたいだけ・・というポンチな人間性を、技術と機材と(ステレオタイプでクッダラナイ世界観の)英詞で必死に隠蔽してるバンドなのか、はたまた決してそうでは無く、独立精神に忠実な「吐き手」が試行錯誤・七転八倒・吹き出物潰しつつ身を晒してるバンドなのかどうか、そういう判断が俺には可能であり、その誤りの無さには自信があると言いたいのだ。なめるなよと。見た目やノリや小手先のもんで、そう簡単に欺かれてたまるかよと。個人的に思うのは、やっぱりロックバンドというのは「鬱憤晴らし」だろうって事。気取りを排除した「ゲロ吐き行為」だろうよって事。演奏家じゃなしに表現者であるなら、それは自己の内側に溜め込んだ感情や心情(という「自分物語」)を表現する・・って事に他ならないでしょう?パンクロックに関して言えば、それは当然、苛々や悶悶や泥泥等の「負のイチモツ」限定の吐露になるよね(ポジティブパンクなどという矛盾した言葉を俺は一生認めんぞ)。そんな訳で、かいつまんで言えば、各バンドマン達がそれぞれ心酔するジャンル及び心酔する先人さん達とどういう風に向き合ってるか、憧れだけの勘違いで終わってはいないか、そういうものが特にライブには如実に表れると、俺は思うのです。そして何より、いいバンドのライブにはその人間の「念」・「演奏力を超える生々しさ」がにじみ出ている。けど、本質放棄の演奏家バンドのライブにはそれが無い。幾ら打ち合わせして演出したって、単なる「毎度こなれた実演販売」でしかない。産みの苦しみを御存知無いそういう後者が、暗中模索する前者の無器用な表現活動を笑う事は、絶対に許されない。と言うか、俺が許さんよ。先日対バンしたバビロンズというバンドは、いいバンドでした。あんなベッピンさん(普通なら「だめんずうぉーかー」よろしく暴力チャラ男に貢いでてもおかしくない様な正統派の美人)が、あんな「絶対にモテなさそうなドゥームロック」を、何とまぁストリート性&ファッション性の皆無な吐き出し方でやってるんだろう・・と非常に親近感も覚えたし。そのVoは、小綺麗にマトモに唄い上げる気など更々無いに違いないおぞましい声(デス声ではない)で哭き、Gソロも一切無く沈んだリフをネチネチ重ね(個人的にここが何よりツボ)、ひたすら暗く、ひたすらおっかなく、Bassもドロロンとしたいいフレーズで、呪術めいた長メロもあったりして、ダブルホーンってのは本来こういう生々しい音出すバンドにこそ掲げるんじゃないの?と、俺は今ここで真剣に問いたいんだがな。古くからの友達でセンチメンタル出刃包丁という、メタルリフとパンクリフとを変則ハードコアなドラムと展開で無理矢理崩した鋭利な曲に、アナルオナニストであるがゆえにGGALLINやダービークラッシュに憑依された社内イジメられっ子が童貞のままVoをやらされ恨み言を乗せている、まさに文字通り弧軍奮闘してるハードパンクバンドが居ますが、彼等の事もまた、軽視では済まされない(最近の楽曲、最近のライブは本当凄い)ぞ。もしサタニックという形容詞が本当に実存するのならば、その冠は、「聴いてて何だかモラルに欠けた悪い事がしたくなる曲」を作り、それを観客に一切気を遣わず(むしろ嫌われる位に)ゲボゲボ吐き出す、(一般大衆及び世間に対して)憎しみ強き人間のバンドにこそ、捧げるべきじゃないでしょうか。例えば、例えばね、骨太な良質オールドロックの重いリフも切ない名曲も、俺は大好きですよ。好きだけどさ、実際は健全で汚れの無いメンバーがノンアルコールで挑む、"悪魔的"では決してないその土臭いブルースロック楽曲と、その完成されたショウケース(安定しきったステージング然り、お決まりのMC然り)に、客席でいい大人が揃いも揃って笑顔で矢鱈とダブルホーン突き上げてるのを見る度に、俺は最近「何だかなぁ・・」とゲンナリ興醒めして溜め息ついてしまうのです。や、俺も大好きよ?そのバンド。客が俺含めて二・三人だった頃から大好きよ?その気持は変わっとらんよ?でもさ、でもコレ、サタニックですか?凶々しいか?ちゃんと詞読んでる?ちゃんと聴いてます?どいつもこいつもよー、その目で一体何見てる?その耳で一体何聴いてんだ?全く、間抜けだらけだ。

今週のおかず三品:
危険かしら/伊東きよ子(レコードショップ芽瑠璃堂
魔女よ誘惑しなさい/バビロンズ
蒼いタメイキ/明石家さんま

   

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