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第二十四回 ヒスコンテスト
中学生棺桶の秘書であり、CDやらチラシやらの全ての「似顔絵」を手掛けているハヤシさんが、長年勤めていた会社を今月で辞める。実はその会社は、中学生棺桶のメンバー(四人中三人)がもう何年も前からドカっと腰を下ろし、シッカリ根を張って小銭を稼いでいる、「安住の地」でもある。断っておくがそれはあくまで小銭稼ぎの「副業」であり、我々の本業は「復讐」に他ならない。かと言って「復讐」なんてものは、全く金にならない(手前の気持が場面場面で高揚する以外はデメリットだらけである)。なので結局、この様に行動原理・精神支柱・指針が明確かつ反逆的なバンド程、「アルバイト」の草鞋を履く事になる。リアルな話、我々はずっとハヤシさんの下で、文字通りハヤシさんに支えられながら、面白可笑しく、けれど静かに日々働いて、働けていたのだ。その「穏やかな空気」は今後、間違い無く一変する。ハヤシさんが辞めた後の新しい店長枠には、横浜の馬車道とかいう所から「無駄にデカい体にまるで似合わないスーツを着込んでダパンプみたいな糞ダサボンバー頭で偉そうに忙しぶっては元ヤン気質をひけらかす」体育会系浅墓マッチョ主義者の典型男が、大威張りでやって来る。しかも見るからに年下だ。奴は中野を知らぬまま、中野という土地のカラーにお構い無く、つまり客層やその要望を一切無視して、店を自分色に染め上げるつもりらしい。店を毎日一人できりもみしてる我々「最前線の従業員」の意見など、これっぽっちも聞く気は無く、横浜でそうして来た様に「自分の言いなりになるだけの自分軍隊」を作るのだそうだ。ディズニーランドやブックオフみたいな「宗教的で気味悪い空間」に店を変えたくてしょうがないのだろう(店内の空気は間違い無く一気に悪くなって客足は遠のくと思うんだが)。
ハヤシさんの退社の原因こそ他でも無い、奴である。奴が嫌で辞めるのだ。「いいかげん耐えられない」からオサラバするのだ。以前から会社にフラリと現れては、デカい態度と気持ち悪い熊面と不似合いで見苦しい頭とスーツ姿で横暴なる「中野への口出し」。そのツラとその声とその振る舞いに付き合いながらの重労働に、安月給では割に合わないのだ。その胸中には心底同情する。いや、同情してる場合では無いのだ。間違い無く、俺は簡単にクビを切られる。早々と奴と喧嘩して辞める事になるに違いない。以前からごくたまに俺が店番中に来ちゃアラ探しだけして帰る奴。はっきり言って、俺はたった一人で静かに本と戯れる今の仕事は、少しも苦では無い。だから怠惰ゼロで真面目にこなす。店の存続の為、我が憩いのオアシスの維持の為、こなす。だから、奴が指差して注意したいであろう「アラ」は、探した所でそうは見付からない。でも、奴としては何かしら高みから指図はしたい。何とかしてびびらせたい。ではどうするかと言うと、俺個人の「身なり」にダメ出しをするのである。店の売り上げの伸び悩みには、店の質がどうこうでは無く、従業員が量産型無感情ロボット化・兵士化してないからだと言いたいのだ。全て、従業員の(接客態度では無く)風体だけのせいだと。馬鹿言っちゃいけない。後からズカズカ我が中野に来て、何を偉そうにのたまうか。そんな訳で、もう奴の何もかもが気に入らない俺は、「お前が大嫌い」とあからさまに顔に書いて対応する事だけで、今までは何とか済ませては来たが、これからは毎日毎日奴の相手をしなきゃいけなくなる。無理だ。こんなに嫌いなんだから。俺は身内の誰もがひく位「我慢出来ない人間」だ。「馬鹿意地」を張り続ける男だ。衝突は必至である。思い起こせばいつだってそうだった。今まで沢山の仕事を経験したが、その何処にでも巣食うマッチョヤンキー派閥(連中は「家庭の幸福」が目標なので決まって「社員」である。つまり矛盾を通してでも、弱い者いじめを居直ってでも、俺をこき使える「上司」だ)に、その人間臭い「輪」への拒絶をあからさまに示してしまうがゆえに必ず目をつけられ、必ずその徒党の長とモメて(俺はエイプども相手に冗談でも頭は下げないし笑顔も見せないし告訴を取り下げないし上っ面の挨拶すらしない。保身と見栄で浮わついてる向こうサイドより余程スジが通っている筈だ)、そして必ず転職に至る。それが毎度毎度のオチだ。これは、キャラ作りを狙った「口からでまかせ」では無い。本当に毎回そうなのだ。今までの職場、全てが全く同じ(経緯での)辞め方である。今回とて例外では無いだろう。おそらく二ヶ月後辺り、俺はいわゆる無職である。久方振りに「只のバンドマン」になる。社会生活不適合者である。笑い事では無い。昔は昔で、数箇所の女友達のアパートを曜日ごとに渡り歩く「住所不定」男として、のうのうと阿呆の様な生活をしていたが、今は違う。れっきとした自分ん家を持っている。だから、金が無いと追い出される。気に入ってる部屋なので、失うのは嫌だ。バンドもまだまだ続けたい。戦隊モノのDVDもまだ欲しい。頻繁に外に呑みに行きたい。よって、金は必要だ。だが、この風体でこの年齢でこの気性で無免許で無資格で、この先一体何処に稼ぐアテなどあろうか?そこで、最低下劣のこの男は考える。血の繋がらないママやパパ、誰か囲ってはくれませんでしょうか?くれる訳無い。そんな物好き何処にも居ない。絶対に居ない。毎日毎晩、身の程を知れば知る程、自分にとっては「ぬるま湯」というものが、夢のまた夢のそのまた夢だという事が、深刻に真実味をおびて来る。まず俺のこのルックス自体、ホモにもバイにもビジュ子にも泡姫にもマダムにも好かれそうにない。その上、今後一瞬たりとも絶対に流行りそうにない「人間」だ。カツーン(日本征服を狙う悪の組織.ジャニーズ事務所の史上最悪のヨゴレで、外身も中身もプライベートもホストみたいな六人組。事後のフォローが甘い「知恵足らずのガキ」なので、他のジャニと違ってどんどんボロが出る。散々貢がせた挙句、この夏は愛で地球を救うらしい)みたいな人種とは、かけ離れている。自分でも何言ってんだか何言いたいんだか解らなくなってきたので、この辺でおしまい。どうなるんだ。俺はこの先。
今週のおかず三品: 誰を怨めばいいのでございましょうか/三上寛 BLACKOUT/SUGAR SHACK 暗い日曜日/人間椅子
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