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第二十八回 玩具違い
ヒトと接するのは、嫌いじゃない。嫌いじゃなくなった。以前に比べたら、可也の興味がある。それに、いよいよ鬱陶しくなって来たら逃げてしまえるし、そうした所で誰も追って来ない(誰も俺なんか追わない・その必要が向こうには無い・そうさせる面白さが俺には無い)からだ。その事をやっと覚えたからだ。ヒトとの関わりで、遠慮と横柄と誤魔化しと労りの「山崩し合戦」で、その報酬として、そこで発生する金。その金は、あれば無くなるまで使おう。無くなったら、一人で本でも読んでりゃいい。読むのに疲れたら眠るだけだ。日がな一日、うとうとするさ。「邪魔者」ってのは何処でだって目につくが、無理にでも自分の目と耳を塞いで、何とか眠りに入れたならば(入れたならの話だが)、そこまでは邪魔しに来ない。あんな臭い臭い徒党でも、眠ってしまえば「もう知らぬ」だ。もし、それでもそこにまで連中がドカドカ踏み込んで来たならば、本当は望んでんだよな。奴らの如き「侵入者」、もとい「隣人」を、実は欲してんだよ。強い想念は、その自覚無自覚に関わらず、届くのだ。夜の夢には、響くのだ。だって自分の枕元には、自分のアイドル達が必ず遊びに来ます。古いアイドル新しいアイドル、次々に、ちゃぁぁんと皆、おいでになります。俺にとって都合の良い性悪さで、痛みやぬかるみを、それも当然都合の良い濃度で、アイドルは「欲しいんならあげようか?」と俺を見透かし、その全部を提示し、俺は俺でそれらに大はしゃぎで喜ぶ様な真似はせず、野暮ったくてうすのろで気の回らない男として、半笑いで受け取る(夢の中にまで来て演じる必要が在るのか?と自分自身でも思うが仕方無い)。現実世界に果たして存在するかどうか解らない(おそらくまァ居ないだろう)、外身も中身も悪戯な「バケモノアイドル」どもが、気まぐれに、それこそ戯れに、こんな男とユラユラ遊んでくれる。物の様に扱われ、尚且つ「乱用」される事に憧れがあるので、夢ん中ではその通りにされます。少年の様に自ら駆け回るよりもむしろ、少女の様に連れ去られ、偏った愛撫を受ける事に憧れがあるので、その通りにされます。身も心も易々と掌握されてしまった俺は、確信犯の眼差しを向けられて、その魔術師の「玩具」として、只その辺に転がって居るだけだ。にこにこして居る俺。にこにこしながら、己の「望み」の傍らに在る俺。バケモノども(存在自体がバケモノ的・悪魔的なのである)の吐く息と、それに乗る凶々しい言葉、それを「リズミカル」だと錯覚させる様な声色、その見事な「奇っ怪な調和」によっての愛撫。そしてその、白か黒かピンクか紫か判断しかねる「肉」が発する香り。ヒトの匂いとはまるで違った、暴力的ではある(のかも知れない)が安寧で静かで、全てを委ねたくなる匂い。イコール、ここでしか貰えない匂い。ここには鏡も無いんだと、感じる。本当に、本当に、ずっとボンヤリが可能なのだろう。「何も食べたくないのに腹が減る」みたいな憎たらしい矛盾現象なんて、起きる余地が全く無い。楽、だ。それは、とても楽だ。
と、そんな事を考えながら文章にして、その後酒呑んで床に就いたらば、怖い夢を見たのである。こんな時に限ってだ。久し振りではあるが、安楽でもエロでも胸キュンでも無い、まさに「悪夢」というジャンルである。全く、馬鹿みたいだ。折角前フリまでして、さァいよいよこれから「気違いじみてはいるが心地良い夢」の話を具体的にしようと思ったら、これである。急激に、話す気が失せてしまった。いつもの事だ。傘を持たずに外に出りゃ、どうせ小雨が降り出すんです。青信号、渡ろうとすりゃ一瞬で、黄色に真っ赤になりやがるんです。現実、現実だ。そいつがいつでも待って居る。そして待たせてもくれないのが、生活。とことん馬鹿らしい。本当に侘びしい。正午を過ぎた我が家では、今起きたばかりの俺の目の前を、下着姿の女がウロウロしている。それでもどうやら、ここに混沌は無いらしい。ゆえに漫画も無い。「奇っ怪な調和」なんて無い。俺は正気で、皆も正気。ここは、ここは今、穏やかな時代。誰も玩具にゃならない。自分は自分の玩具にもなれない。つまりこれは、「生き恥」のお話。27歳を超え、未だ何も成せず、「伝説の人」の様に死ねない。戻り道も無い。戻る場所がもう、無いのだから。そしてそれでも、この期に及んでも、ベタに「狂う」なんて出来無い。このまま、正気。このままなら、正気。
今週のおかず三品: EULOGY TO LENNY BRUCE/NICO WHERE IS MY MIND/PESKY GEE! 望郷/山崎ハコ
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