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第7回 四国遍路編2
これ1日ずつ載せてったら、36週間四国の話を続けるってことになるのかな?まあ、それはありえません。そりゃめんどくせえよ。ただ、どこをどう端折ればいいのかわがんね。
2日目 7月19日
今日はここ。明日はどこ?
起きると昼前だった。睡眠とって気分爽快。食堂でわっせわっせとカレーを食った。うまかった。重たい船は予定時刻ぴったり1時10分に徳島県津田港に着いた。俺は14kgの相棒バックパックをよっこらせと背負い、紅い心臓を抱え蒼い期待を添えてにんまり笑顔で歴史の沈む四国に降り立った。 そこは夏だった。 ぴかぴかの新鮮な太陽に熱せられた潮風が渦を巻いて天に上がって乾いた音を鳴らしている。ふと思い立った入道雲が独り言を言いながら膨らんで白くなっていく。カモメが最高速度を目指してエサも食べずに飛ぶ練習をしている。目に見えるもの全ての額に「夏」と墨字で大きく書かれていてうざいくらいに存在を主張している。瑞々しい生命力と痛々しい刹那感が身を襲う。頭の中が透明になって景色と同化する。 あつい。 まぶしい。 そこは夏だった。 俺は夏の中にいた。 バスで徳島駅へ行き、徳島駅から電車。一番札所のある板東駅で降りた。10分ほど歩いて俺は出発地「四国遍路一番札所竺和山霊山寺」の門前にかっこつけて立った。 寺には結構参拝客がいた。俺は遍路グッズを買おうと購買所に行き、遍路グッズを物色した。同じような境遇なのだろうと推測される白人がいて、同じようにグッズを選んでいた。バッグやら白装束やら笠やら、結構な値段がしたので少し興ざめした。店の奥にはレジがあり、そこでおばさんが万札を数えていた。俺が「こんちは。お遍路初心者なんですけど、一番安くて最低限の装備するならどんなんがいいですか?」と声をかけると、手を止め、「学生さん?一人で歩かれはるんですか?」「そうですね」「野宿?」「はい、そうです」「納経帳は無いとあかん。あとは、道は杖があるほうが歩きやすいから杖と、お遍路やってるって道ですれ違う人に分かるように笠持ってたほうがええで。同行二人ってちゃんと書いてあるやつな。暑いしな、暑かったらかぶればええ」「はい」「野宿も大変やからなぁ。ちゃんと野宿しますって周りの人に聞くんやで」と言って、「これはお接待であげるわ」と言ってお遍路ガイドブック、なる本をくれた。そしてまた札束を数え始めた。遍路グッズは全部で6000円くらいした。白装束は高いから買わなかった。遍路ノートに記名し、発心を固め、ガイドブックを見ながら礼拝を済ませて次の寺へ行こうとすると、さっきの白人がさっきのおばさんと話していた。おばさんは英語が分からないらしく困っていたので、別に俺も英語ができるわけではないが、行ってなんちゃって通訳をした。はっきり言っておばさんの阿波弁のほうが聞きとりにくかった。とりあえず一緒にその外国人とは行動することになった。寺を出てその外国人と次の寺へ向う。 その白人はアメリカ人で、ブライアンという名前で、先週サンチャゴの巡礼を済ませてきたのだそうだ。どういうところで寝るんだ?と聞くと、オンザロードだ、と答えていてかっこよかった。彼に、なんでお遍路するんだ?と聞かれたから俺は、イッツヴァケイションだよ、と答えた。青い悲しい眼をした奴だった。同い年だった。二番札所まで彼と一緒に歩いた。その距離約1.2キロ。長身の彼は歩幅が大きく、歩くが速かった。俺が遅いだけなのかもしれないけど。すぐに「第二番札所日照山極楽寺」に着いた。 極楽寺にはでっかい日本庭園があって、ブライアンは、ビューチフル、ベリービューチフル、としきりに呟いてデジカメで写真を取りまくっていた。俺はそんなブライアンを余所目に礼拝をすまし、参拝客と談笑。近くに無人駅があることを教えてもらった。今日はそこで寝ることにした。そういやあいつはどこで寝るつもりなんだろうか、聞こうと思ってブライアンを探したが、いなくなっていた。国に帰ったのだろうか?
JR高徳線阿波川端駅。今日はここで野宿だ。俺はわざわざ確認する。 俺がいるところ、今日は、ここ。そんでもって、明日は、どこ? 楽しい。浮遊感を噛み締める。俺は今おそらく、自由だ。奔放だ。誰もいない駅だが掃除は行き届いていて、鈴虫の泣き声がして、ぬるちっこい風が吹いていて、電車は1時間に1本。ホームに出て夕闇に巻き込まれていく、どこまでも続く線路を俺は缶コーヒーを飲みながらぬるぬると眺める。最終電車が10時くらいに行って、駅は静かになる。明日も早いからもう寝よう。待合用のベンチの上に野宿シートを敷き、横になる。無人駅の蛍光灯は消えない。俺のパッションも消えないぜ。 俺は地球を思って目を閉じた。 すぐに睡眠がむくむくと脳を覆い、俺は沈んでいく。と思ったその時だった。 「すいませーん、お遍路廻られてる方ですかぁ?」 眼を開けると警察官が立っていた。職務質問。不審者とカテゴライズされた俺。ちょっと一人で無人駅で寝てるだけじゃん!後で知ったが、遍路を廻っている人が犯罪を犯したり犯罪にあったりするということは結構あるらしい。そういや変なじいさん捕まったしね。それはそうとしてもまったく、たのむぜポリス。もうちょっと早く来いよ寝る前にさ。もそもそ起き上がり、免許証を提示する。驚いて起きたから目が覚めてしまった俺は、また無駄に人生にぷくぷくと向き合う。ほんとに、色んなことがあるもんだ。 でも歩くのは楽しい。
星と虫と駅と人。
明るい明るい明るい夜。
まだ旅は始まったばかり。
続く
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