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第31回 四国遍路編12
7月27日 10日目
駄・洒・落2
朝7時。民宿「うらしま」の部屋で目覚める。快適だね。下に降りて朝ごはん。一つの金字塔とも言える駄洒落を思いついた最初の朝。俺はそのおかげで超御機嫌。るんるん。今日も一階の食堂では宿の「かまんよ」おじさんが朝刊を読んでいた。
俺「おはようございます」
おっさん、聞こえてない。
朝食はカツオのたたきとか。味噌汁とか納豆とか。朝からカツオだぜ。やっぱ土佐っつったらカツオだ。古墳時代から決まってる。ご飯おいしいとこ泊まったね。ラッキー。すげーしか言って無いもん俺。でも、冷静に考えたら本当はすごくないかもしれない。普通の民宿のような気もする。俺のこの10日間が異常なだけかも。民宿「うらしま」です。皆も寄ってみな。ご飯は大盛り。食いきれないから、包んでもらおうと思って、おっさんに話しかける。
俺、大きめの声で「すいません!これ、おにぎりにしていいですかー?」 おっさん「ああ、かまんよ(好意訳:はい、全然かまわないですよ)」
つっておっさん奥からサランラップ持ってきて俺のそばへ置き、無言でどっか行っちゃう。俺が自分でやるんかい!面白いから許す。にぎにぎ。あんまりやったこと無いから、旨く作れない。結構難しいのな。握り飯な。
あの駄洒落のことを反芻して、俺は思い出し笑い。
実はこれから向かう第26番札所のある金剛頂寺は四国遍路3大難所の1つ。山の上にあって、そこまでの道のりは急傾斜でものすごい坂らしい。通称「真っ縦」。なんだまったて、て初めて聞いた日本語だぞ。でも俺は布団で寝て、いっぱい飯食ったから発奮。どんな山でも登るぜ。おう今ならキーリマーンジャーローにでも登ってやる。おにぎりも持ってるしな。朝7時。俺は宿を出発。
俺「お世話になりました。行ってきます」 おっさん「あい」
あ、なんかコールアンドレスポンス。通じ合った感。嫌われてるわけではないみたい。さらばおっさん。
玄関を出ると朝陽はとっくに気温を32度にして俺を待っててくれていた。眩しいぜ地球。そうだよな。こうじゃなくちゃな。今日もお前と2人で勝負だ。あ、同行二人なんだっけ?空海さんも一緒なんだな。3人か。男3人か。むさいな。俺が一番偉いけどな。
あの駄洒落を、俺は思い出し笑い。
俺の荷物は大体18キロくらいあった。流石にこれを背負って山を登って下るのはきついし、阿保みたいなので、登山口の近くの茂みに置く。俺の洗い立てのパンツ、盗まれたらどうしよ。お遍路さんのだよっての示すために笠も置いてく。荷物を置くと体が軽くなる。悟空の気分。杖と貴重品と納経帳だけ持って。頭にタオル巻いて。眼前にどん。難所と名乗る山。本当に縦の坂。頂上には由緒正しい寺があるそうだ。がはは。発奮。飛ぶぜ。オス、オラ悟空。おめえ強そうだな。
あの駄洒落が背中を押すんだ。
歩くと、難所っていうだけあってきつい。俺ははあはあ登る。意気込んで息を切らして一気に行き切ろうとする俺は粋。おっしゃ絶好調。無意味にダッシュ。誰もいない山道をダッシュ。すぐにへたる。これ読んでる人に伝わらないだろうな。びっくりするくらいきつかったよ。ひざって本当に笑うんだぜ。俺のひざは大爆笑。ボクサーの合宿みたい。ガチンコで観たやつみたい。竹原ぶっ殺す。
なんか黒いのがある。
ふと、足元、見慣れない黒光りする塊がちょこんと、あるのに気づく。よく見ると、クワガタがごそごそ。
クワガタだーっ!!!
俺ね、雑木林とか無いとこの出身だからさ、カブト虫とかクワガタとか野生のやつ見たことなかったのよ。はじめて見たワイルドクワガタ。かっちょいいー。何クワガタだろう。ノコギリじゃないぞすごいやつだぞ。ミヤマか?ミヤマってすごいんだっけ?ミヤマ多分有名でしょ?高いよね?売れる?高く売れるものだとしてもクワガタ売れる状況じゃねー。朝8時。俺は知りあい全員にクワガタ写メールを送る。夏の朝。皆まだぐーぐー寝てるんだろうな。このメールで起きる奴がいるんだろうな。なあ、俺のことを知ってる皆。俺は高知の山奥でクワガタ捕まえてるよ。君は何をしているんだ?教えてくれよ。って俺のクソメールが電波ぎりぎりの山の中から放射状に日本中に飛んでく。ん〜スカイネット。届けこの情熱。
俺の通った跡にはあの駄洒落が咲くんだぜ。
俺は生きているクワガタをブローチにして何回目かの発奮。こいつは俺の家来だ。名前は島田雅彦。登るぜ。原生林の坂。暑いけどな。たまにお遍路さんが降りてきてすれ違う。「こんにちは」「こんにちは」、俺は出発が遅めだったから(みんな5時とかに出発するみたい)一人で登ってる。
ぐんぐん登って、着いた。寺の奥から般若心経が流れてる。色不異空。見晴らしのいいところがあって、そこから景色を眺めながらおにぎりを食う。空不異色。んまい。当然んまい。色即是空。広がり広がる高知県。色即是空。肩にクワガタ。いつもの要領で納経して、下山。下山がまたきつい。ずーっと下り坂ってのがまた大変なんだね。ひざへの負担が重力。荷物置いてきて大正解。
あの駄洒落が俺を先導してって俺は着いていくだけ。
荷物拾って今度は第27番札所神峯寺に向かっててくてく歩くてくてく。真実へ向かって歩く。歩いているのかシェリー?クワガタはどっか行っちまった。あいつにはあいつの事情があるんだろう。俺には俺の事情があんの。歩く歩く。気合で30キロ歩破。高知県田野町、二十三士温泉ってところにたどり着いたよ。お。温泉入れるぞ。やったね。奈半利川がぐだぐだ流れてる。
あの駄洒落が心臓を動かすから俺はヘモグロビン。
風呂あがって。食堂で飯食って。あたりは真っ暗。あ、寝床探してない。野宿はね、明るいうちに寝床探すのがミソなんだよね。しまった。まいっか。目の前に公園がある。奈半利川が目の前に流れてる。そこにしよう。
公園のベンチにシートしいて、横になる。川がじゃらじゃら流れる音がうるさいから耳栓して、さ、今日も疲れた。お休みなさい。ぶすぶす夜がふける。この繰り返しだ。明日もがっつり歩こう。と、思ったけど、
寝――――――れ―――――――ん!!!
寒――――――――い!!!!!
ここでにやたび20万人の読者の為にワンポイントアドバイス。野宿に興味ある人は覚えておくといい。川辺とか湖畔とか、水辺はテント等が無いなら野宿はやめたほうがいい。びっくりするくらい寒いから。普通の場所と全然違う。水辺って風が吹くんよ。なんか知らないけど夜になって気温が下がると冷たい風が吹くんよ。風が吹いてると寝れんのよ。このままだと風邪ひくわ。俺は寝場所を移そうと真っ暗な中に荷物をまとめだす。でももうあんまり移動したくない。眠いし。やっぱ「家」ってすごいよ。壁無いとだめだね。風吹くからね地球ってね。屋根壁はどこかにないか?
ここは公園。
視界に入る屋根壁といったらあれしかない。
この日、俺は生まれて初めて公衆トイレで寝たんだ。駄洒落を抱いてね。
民宿に泊まった次の日にトイレで寝てんのな。すごい落差だ。
寝心地良かったよ。ぐっすり眠れた。
めでたしめでたしだ。
ああ、駄洒落って何なんだって?
そういや書いてないね。
気になる?
まあ来週書くよ。
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