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第42回 四国遍路編15
こないだ俺が講読している面白雑誌「人生をより低迷させる旅コミ誌『野宿野郎』」の編集長、かねごんさんとお会いする機会があった。かねごんさんは竜飛岬から下関まで歩いたり徒歩で北海道1周したり四国2周(お遍路さんもやったんだって)したりして、野宿経験100泊超という、すさまじい経歴を持つ野宿クイーンだった。すげーすげー。尊敬します。無邪気な感じなのに真剣でしっかりしてて、やさしそうな人だった。新宿の思い出横丁で酒を飲んだ。雑誌の話やらいとうせいこうの話やらいとうせいこうの話やら雑誌の話やらいとうせいこうの話やらいとうせいこうの話やらで盛り上がって楽しかった。「にやたび」も読んでくれたみたい。旅の話をしていたとき、かねごんさんはビールでほんのり赤くなった顔を真剣な表情にして俺にこう言った。その言葉がすごく胸に残っている。
「旅って逃避ですよね」
すげーよかねごんさん。底なしだよ。
意味わかんねえよ。
あんた一番逃げまくりですやん。
7月29日 12日目
出会う逃げる 前編
カナブン駅を出て海沿いをすかすか歩く。高知県のこう、へっこんでる部分だね。ずがずがずがんと太平洋。いつもでかいね太平洋。まだまだ青いね太平洋。今日は曇ってるね空。それでもでかいね空。まだまだ広いね空。高知市が近くなってきていて、歩きながら周りの街に活気が出てくるのが手にとるように分かる。びんびん感じる。都会に進んでいく感じ。人の匂い、垢の匂い、生活の匂い、歴史の匂い、風俗の匂い、哀愁の匂い、破壊の匂い、踏襲の匂い、創造の匂い、人間の匂いが前方の、道の向こうの、未知の街からぷんぷん匂ってくる。その感覚がとても新鮮で、これが俺は動いているという実感なのかな、と思う。ころころと心臓の中で転がる。人のいっぱいいる所へ向かっている。 食堂があって、そこでブランチ・親子丼を食べた。480円。田舎はなんでも安いからいいね、つって第28番札所大日寺をいてこます。順調に歩いていると腹が痛くなってきた。やべー、うんこしたい。親子丼か。親子丼めが。くそ。むは。おべ。微妙に街中だから野グソもままならない。コンビニとか公衆便所無いかなあ、と思って歩いていたら、急に車が止まり、運転席からおばさんが降りてきて、「みかんいりませんか?」と言ってみかんをくれた。お接待だ。ここぞとばかりに、「あ、すいません、僕今すごくトイレ行きたくて、近くの公園とかコンビニとかトイレあるとこまで乗せてってもらえないでしょうか?」と言うと、笑って乗せてくれた。いいのか歩き遍路? そのおばさんは介護系の仕事をしていた方で、2年ほど前に病気を患い、仕事を辞め、1年ほどして回復した後、思うところあって四国遍路を歩いて1周し、結願し終えた今は普段見かけたお遍路さんにこうして接待するようにしているのだという。病気で「人間」というものを深く考えるようになり、今は通信大学で人間科学を専攻しているのだそうだ。いろんな人がいるもんだ。俺がすごいですねー、ってなっていると、通信大学の卒論を書かなきゃいけないからアンケートに協力してくれないかと言う。俺はもちろんですよ、と快諾する。何でも協力しますよ。四国遍路についてのアンケートだった。箇条書きで質問が書かれていた。質問内容を全部は覚えてないけど、最後の質問だけは覚えている。
「あなたにとって四国遍路とは何ですか?」
答えらんねえっつーの。
俺は、
「トイレに行きたい人をトイレに連れて行ってあげたり連れて行かれたりすること」
と書いた。
不本意。
車は2キロくらい先のコンビニに着いて、俺は思いっきり排泄行為を勤しんだ。抑圧された欲求を解放させた時のあの震撼。you know?。おばさんに礼を言って別れた。多謝。本当に感謝。人間って何なんだろうね。何で歩くんだろうね。四国って不思議な土地だね。何で親子丼食ったくらいで下痢するんだろうね。何でこんなに、こんなに夏は暑いんだろうね。またすかすか歩く。
第29番札所の名前が「国分寺」でちょっとだけ東京を思い出す。いや、国分寺なんて数えるほどしか降りたこと無いけど。アンガールズっていうライブハウスがあるよね。間違えたモルガーナだった。寺内でうろうろしていると曇天だった空から雨粒がぼたぼたぼたぼたぼたーっつって、雨。お好み焼き屋で雨宿り。 四国はお好み焼きが安い。300円くらいでおなかいっぱいになる。ファーストフード感覚。うまいしね。近くに丸和石材という石材屋さんがあって、そこはお遍路さんを泊めてくれるのだと言う。今夜はそこに一晩置かせてもらえないかと思った。その石材屋までの道順を御好み焼き屋さんのおじさんに地図描いてもらう。雨合羽をかぶって石材屋まで行く。平気で親切を受けるようになってきた自分に違和感を感じるが、雨も降っているし、寝床探すの大変だし、どうしようもないからとりあえず人に甘える。 どうやら、人がたくさんいるところに出て行くと、人に出会うらしい。
続く
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