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第54回 四国遍路編22
8月1日 15日目 白 海 人 後編
高知の膨張した空気が透明だ。それを吸っている靴を擦っている。
四万十川沿いの観光客向けのレストラン。入ると客が1人もいない。営業時間を見ると閉店まであと40分ほど時間があるので、営業しているはずである。職務怠慢かと、奥まで入ってみる。そしたらコックとこれまたおばさんパートのウエイトレスがうはうは談笑していた。「食事できますか?」「あ、すいません。できますよ」。ゴリ丼を食った。ゴリっていうのはなんかちっちゃい魚。そのから揚げの丼。おばさんはお遍路スタイルの俺に興味があるよう。「旨いやろ」親切を俺に笑顔で投げかけてくる。それがすごく嬉しい。「サービスやで」と言って青海苔を俺の味噌汁に入れてくれる。四万十の青海苔。旨い。「これ高いんやでー」「夕飯作ったるな」と言って握り飯をにぎってくれる。具はもちろん青海苔。「四国の人はみんなあったかいねんで。特に高知の人が一番人情がある」。俺が「ほんとそうですよね」と言うと嬉しそうに笑った。「お兄ちゃん高知県よろしくなー。高知県が一番やでー」と言って見送ってくれた。
はい。高知県最高です!
四万十川沿いを寝場所を探して歩いていると、アイスクリン屋さん。アイスクリン。皆さんご存知ですかアイスクリン? 桃鉄にも出てくるやつね。アイスクリンは高知名物!ってプッシュされてるけど、沖縄にもあるんだよな。どっちが本家なんだろう。 http://www.kochilife.com/~1kakeru1/ アイスクリン屋の前。おっさんとお兄さんがいて、アイスクリン屋のおばさんとパチンコの話をしていた。俺を見とめ、話しかけてくる。「やあお遍路さんアイスクリンいかがですか?」お兄さんが奢ってくれる。「お、毎度ありがとね」とお兄さんに言うおばさん。俺はアイスクリンを食いながらパチンコの話を聞く。北のほうの店にいいとこがあるらしい。俺が、「ここらへんで野宿できそうなとこってありませんか?」と聞くと、お兄さんが、「俺が車で海の側の公園まで連れて行きますよ」と言う。どうやら今日はやたら人にお世話になる日らしい。ありがたく親切を頂戴。 白いワゴン。「じゃあ乗ってください」と言って助手席を促す。ふと後部座席を見ると、すごかった。 車の後ろには異常な量のカードがばら撒かれていた。ワンピースの。
サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。サンジ。
サンジが好きなお兄さんらしい。怖いわ。
車の中で少し話をする。俺は大学生だということ。お兄さんは少し行った先の民宿の倅だということ。アニメが好きだということを初対面の俺に臆面もなく話す。程なく海浜公園に着いた。シャワーつきの公衆トイレが俺の今夜のねぐら。もうトイレに寝るのも慣れたね。近くに中学校があって、そこがお兄さんの母校だという。「ここまで久しぶりに来た」と言っていた。ふーん。
俺はねぐらをチェックし、海を眺める。なぜかお兄さんは帰らずに俺の隣にいる。俺はシャワーを浴びたいのだがお兄さんがいるので浴びられない。話題もなく気まずい感じ。俺の携帯にメールが入る。俺がそれに返事を打っていると、お兄さんが、「メールですか?」と聞く。 「はいそうです」と俺が答える。 「いいですよねメール。今はもう電話しなくてもメールで用事済ませられますもんね」 「そうですよね」 「俺にはそういう友達とかいないんやけどね」 聞こえないふりをした。
「明日は何時くらいに出発するんですか?」 「まあ、起きたら行きますね」
「…明日もきっと暑いですからね」 「そうですよね。大変ですよ」 「飯とかどうするんですか?」 「さっきおにぎり貰ったんで大丈夫です」
もちろんここまで俺を送ってくれたこともいろいろ情報を教えてくれたことも全部感謝している。感謝してもし足りないだろう。俺は赤の他人なのだ。こんなことすぐに出来るもんじゃない。この暖かい四国の風土に感動する。素晴らしい。
でもお兄さん。
帰って。
寂しいのは分かるけどさ。
俺眠いの。
東の空で昼の緞帳が上がる。夜の劇が始まるよ。覆っていくのがゆっくり。スローモーション。俺は一番星を見つけた。おにぎりを食べた。一日の終わり。旅路は続く。
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