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第60回 1泊6日の北海道旅行 札幌の夜編2
拙者、中学のころの自由研究で、『嗚呼、セーラム。午前3時のパイドロス』というセーラム賛歌を作って提出したことがあるでござるよ。そしたら担任教師にこっぴどく叱られたでござる。 ここで問いが立つ。何故拙者は教師に殴られたのか。 その理由は2つ挙げられるでござる。まず1つ。率直に。自由研究は理科の宿題だということ。『自由』と名づけられてはいるが、基本的に理科に関わるものを題材とするのが妥当なのでござる。それなのに私は歌を作ってしまったのだ。歌は教科で言えば音楽である。 音楽は、理科では無いのでござる。 そしてもう1つ。拙者は未成年だったのだ。未成年者は喫煙してはならないという法律がこの国には存在している。らしい。中学生が学校の宿題で煙草を褒め称える歌を作る。これは教育として非常に問題なのでござった。 畢竟、拙者は中学時代からセーラムが好きだったのだということが言いたいのでござる。数年前にセーラムは改名してピアニッシモという名になったのだが拙者は、純白の屈託の塗れる古き時代への思慕を込めて、ヤツのことを未だにセーラムと呼んでいる。寂しく、ないように。 うそぴょん。 今のはとても面白いイントロ冗談である。長いイントロになってしまった。拙者は、マルク・朧月・克也と申すものでござる。お見知りおきを。 唐突でござるが、拙者は今怒髪が天をついている。その話をしたい。激怒。何故か。貴君らは因果応報という四字熟語をご存知だろうか。この宇宙の万物には原因と結果が必ずある。物理である。不条理な生成や消滅は、この世の中にはありえない。必ず原因理由があって回答結果があるのだ。拙者の怒りにも理由がある。拙者は無意味に怒りだしたりはしない。拙者の怒りにも、理由が、あるのだ。ガッデム。ガッデムの理由があるのだ。 山田が雪印を食したいと言っているのだ。 拙者は侍である。甘いものが嫌いである。菊川玲くらい嫌いである。 胸焼けする故。 拙者は甘いものは食わん。甘いものを見るだけでもじまんしんがでる。 じまんしんがでる。 雪印の看板を見つけ、その直営店を見つけ、パッフェを摂取したいと山田が騒いでいる。「マルクマルクマルクマルクマルクマルクマルクマルクマルクパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェ、今うざいでしょ?今うざいでしょ?今うざいでしょ?パフェ。じゃあパフェ食お。じゃないと俺死ぬ。俺死ぬよ?いいの?俺死んでもいいの?」 という状態。状況。手がつけられない。 札幌の、 街中で。 ネオンがにびにびと揺れている。 『雪印パーラー』 仕方なく拙者は山田を斬りながらいけ好かない店内に入った。真っ白な内装の店内には女性客とカップルと子供連れしかいなかった。こんなところにむさくるしい男2人。拙者は注文しなかった。パフェを食うと胸焼けする故。 胸焼けする故。 山田は嬉しそうにクリ−ムブリュレパフェ800円というものを申し込み、購入し、摂食していた。拙者はそんな山田を眺めた。 山田は黒いニットキャップ。グレーのダウン。紅いインナーが襟元で燃えはみ出ている。 薄い唇。細い指でストローを摘んで。少し噛んで。拙者に向かって。転がる声で。 「マルク一口食う?」 む。 こやつなかなか、かわいいではないか。拙者は頬杖をついてそれを眺めていた。無言で首を振った。思わず笑みがこぼれてしまっていたかもしれない。無意識に拙者は、微笑んでしまっていたのかもしれない。 無意識に拙者は微笑を零してしまったのかもしれない。 札幌。 パフェの盛られたグラスをつつく、山田のスプーンは鈴の様な音を出す。 から、ころり。 さて、難解な冗句はここらへんで切り上げよう。拙者は山田に詰問した。その詰問内容は端的にこうである。 カニを食うぞ。 拙者は、カニが、大好きだ。カニだろう。北海道といえばカニだと頼朝の時代から相場は決まっている。カニを主張する拙者を見て、山田はにこにこしていた。 山田を斬り、引きずってカニの食い放題の店へ行き、食った。 カニは旨い。カニの旨さに2人のテンションはアゲアゲである。カニを頬張りながら山田とカニエ・ウエストの話で盛り上がる。拙者は毛ガニの腕の毛で指を切り、血をだらだら流しながらも食事を止めない。becauseカニが旨いから。皿に飛び散る血液を見ながら拙者は「旅とは何か」ということをふと思った。「旅」と「旅行」の違いを思った。我々が今、していること。カニを食っていることは「旅」であろう。「旅行」ではない。そんなこと思った。しかし、拙者は知っていた。そんなことを考えても何の意味も無い。今は目の前のカニを胃の中へおさめることが第一仕事なのだ。拙者は仕事が大好きだ。 働け。 食え。 蓮根。 はたして計らずとも、「旅とは」という問い、空中分解雲散霧消。
札幌の夜。
明日が見えない。
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