第64回 ふうらりふらふら東京散策@ 代々木公園に住む 上

 せっかくのGWなのに、予定が無い。金も無い。愛が無い。仕事が無い。甲斐性も無ければ羞恥心も無い。何にも無いのである。びっくりした。何も無い。これじゃいけない、と思いたち、何かしなければ、と頭を抱え、振り、飛び跳ね、喚き散らし、米神に青筋を浮き立たせて震え、世の中のシステムまたは歴史に対して抽象的かつ超現実的な怒りをぶつけてみるが、何も生まれない。
 私は、間違えている。
 何を? それがわからない。

 ので、ちょっと代々木公園に住んでみることにした。

 体験ホームレスである。体験ホームレス、は本物のホームレスではないため、少し気後れする部分もあるが、だからと言って連休なのに倦怠エーテルで満ち溢れた家に居るなんて嫌なので、一念発起。体験でもいいじゃない。何もしないよりいいじゃない。私は、ホームレスだ。


 ☆持ちもの

 寝袋
 文庫本3冊
 1000円札
 上着のジャージ

 以上。


 荷物は紙袋に入れる。身分証も携帯電話も持たん。ホームレスはそんなもん持たん。鬱屈感とジャイロの壊れた自由しか持たん。ホームレスはそれしか持たん。
 家の鍵をかけたら、その家の鍵を持っているということは変な気がしたので、花壇に植えた。これで私は、身元不明者である。死んだら無縁仏だ。そこらへんの中国人と同じだぜ。誰なのか分からない。誰でもない。
 PM10:00 家が無くなった。
 伝わりづらいかもだけど、東電OLな心境なのである。まあ私は、東電に勤務するほどエリートでも無いし、やってることは大したこと無いが。
 はじめの一歩なのである。追いつけ追い越せ東電OLなのである。ドキドキである。




 最寄り駅。駅から15分くらいで新宿なのだが、新宿までは当然切符を買わきゃいけない。会社から支給された定期券も持っていないのだ。しまった。電車代は別にすりゃよかった。

 持金 870円

 電車代勿体無いから新宿からよたよた原宿まで歩いて代々木公園。夜の代々木とか原宿とか、誰もいなくて寂しいのね。竹下通りががらん。
http://maps.google.co.jp/?om=1&ll=35.669935,139.702041&spn=0.003974,0.008605
 昔、朝方にここにきたことがある。あの時は真夏だった。真夏の朝の代々木公園。そのときに嗅いだ、芝生に浸みたゲロの匂いとか、都会全開のゴミの散乱っぷりにドキドキしたのだが、今目の前にある公園は、真っ暗で、人の気配はするけどあまり危険な雰囲気は無く、何か拍子外れである。トイレに入ったらゲイに「いくら?」とか聞かれないかなとか、ブルーテントの中でチンチロリンが行われているとか、UFO呼ぶ集会が開かれてるとか思っていたのに、特にイカれたやつは何も無さそう。いきなりピンポイントでそういうのに遭遇するってことは無いんだろうね。
 PM11:00
 遠くからずんちゃかずんちゃかと爆音が聞こえていて。行くと100人くらいがレイブパーティーをしていた。刺青を見せてレゲエな人たちが躍り狂って居る。ニットキャップにカーディガンという井出達で私は集団の中に紛れ込みステージを見ると、変なグラサンの兄ちゃんがぷいぷいレコードを回していて、側でエクステンションをぶるんぶるん振り回しながら、裸みたいな姉ちゃんが小刻みに踊っていた。まだ肌寒いのに。
 辺りにあまり上物ではない感じのマリハナの香が漂っていたので、見回すと葉巻みたいなジョイントを燻らせてるいい年したおっさんと目があってなんか気分が悪くなる。向こうもこいつ誰だ? と思っただろう。別に面白いことも無さそうなのでそこを後にする。
 野外セックスしてるカップルいないかなぁ、と公園中を散策するけど、ペッティング止まりでつまんねえ。まだ季節が早いか。寒いもんな。でもこんなとこで足からませてディープキスするくらいなら、家帰ればいいじゃん。新緑の黒で愛を囁きあう人たち。白い肌が闇の中で映えるんだ。
http://maps.google.co.jp/?om=1&ll=35.669351,139.692471&spn=0.003975,0.008605
 ここらへんの、立ち入り禁止の看板が筍みたいに生えてる辺りがブルーテント村で。ひっそりとしていて。寝静まっている。寝静まっている。寝静まっている。本物さんたちは夢の中。洗濯物のTシャツが夜風で揺れていた。
 噴水の側で花火をしているどっかの学生サークル。
 街灯の下で山手線ゲームしているどっかの学生サークル。
 タップダンスを練習している青年。
 私と同じ様に無目的で徘徊しているおっさん。
 ワンレンボディコンの女と渋カジスタイルの男。
 人は結構居る。
 皆盲だけど。
 私はどこに居ようか。
 私と同じ様に公園で一夜を過ごそうとしている人たちもいっぱい居て、ベンチの上で転がっていたり、ダンボールで簡易住居を建築していたり。ダンボールハウスにはマッチ箱型とゲル型が有ることを帰納的に発見。
 マッチ箱型は多分作るが楽で、暖かいけど狭くて耐久性が無い。1,2晩だけ寝たい人向けね。
 ゲル型は長持ちするけど、本格的。
 AM1:00
 を過ぎると、パーティーもお開きらしく、爆音が止み、皆は帰っていく。見ているとちゃんとゴミとか拾っていて、マナー守って素敵なイベント。ピースですね。朝まで踊るゲリラライブとかじゃないのね。さっさとスピーカーやらを片して、彼らの夜は終わり。
 学生サークルも飲み会を切り上げて帰っていった。泥酔もせず。夜更かしもしない。つまんねえな。
http://maps.google.co.jp/?om=1&ll=35.672803,139.692578&spn=0.003974,0.008605
 「棒屋」という売店の辺りでチャリダーさん旅行者さんらしき人が固まって寝ているのを発見。ここは壁があるため風除けになるのと、ベンチを動かせば簡易ベッドになるのだ。旅人はいつ何処でも一番賢い。噴水の側の小さなベンチで寝ちゃうと風邪ひいちゃうもんね。がっちがちの自転車の横でふかふかのマット敷いて黄色い寝袋に包まる髭だらけの青年が眩しい。私もここで寝ることにする。これ以上起きていても面白いことは無さそうだ。
 ベンチの上。相棒の寝袋を広げて。するすると中に入って。文庫本を枕にして。
 蚊が居ないのがいいね。
 都会だからか。まだ春だからか。
 蚊が居ないんだね。

↑ページのトップに戻る↑