第65回 ふうらりふらふら東京散策@ 代々木公園に住む 下

 パキッ。

 パキッ。


 パキッ。

 んな。

 パキッ。



 なんだこの音は? 乾いた音で私はたゆたう眠りの沼からから現実に撃たれる。寒さに気づき寝袋にきゅっと引き締まる。朝。
 田舎の、山奥で、猿か熊かを人里に近づけないよう威嚇のため定期的に山に向かって撃つ鉄砲の音がこんな感じだったな、と思うが、流石に起床2秒後の寝ぼけ頭でも自分が今都心ど真ん中セントラル中心に居ることくらい4万も承知なので、そう、これは鉄砲ではない。
 耳を澄ますと、駐車場のほうから聞こえてくるらしい。私は眼鏡を掛け、でも寒いから寝袋は出ず、蓑虫みたいな姿格好で体を起こして、尺取虫のように移動し、蛆虫のようにジャンプし音のする方向を見た。すると、おそらくブルーテント村に在住されている方達だろう。彼らが駐車場のアスファルトの上でアルミ缶を足で1つずつ潰していたのが見えた。パキッ。
 寒い朝。ホームレスさんが働いていらっしゃるのだ公園。
 ああ、どうでもいいや。と思って私は2度寝。すやすやと寝て、起きるとアルミ缶を潰す儀式は終了していて、起きると周りに居たチャリダーさんも居なくなっていた。私は一人ぼっちだった。

 よたよたと起きて水のみ場で顔を洗って、がぶがぶと臭い水を飲み、芝生から聳え立つ時計を眺めやる。
 AM6:00
 早っ。
 眠いわ。

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060413k0000m040098000c.html
ずぅ。“殺人事件トイレ”と赤マジックで丁寧に落書きされたトイレで用を足していると、牛の鳴き声みたいな鼾が個室から聞こえてきた。ずぅ。こんな汚いトイレでよく寝るな。寒いだろうに。臭いだろうに。ずぅ。切ないだろうに。ずぅ。
 鳩が沢山居る。雀が沢山居る。鴉が沢山居る。こいつらは夜はどこに居たのだろうか。枝に止まったまま寝るのだろうか。鳥らは私を怖がらず、私が側を歩いていても飛び立とうとしない。その万物の霊長人間様に対する横柄な態度は何なのだ、と私は怒髪天で鳥らを腕をブルンブルン回して追い回すのだった。
 追い回していると、公園に屯しているのが鳥だけで無いことに気づく。いつの間にか犬が沢山居たのだ。愛犬家達が朝の散歩に集まってきていた。
 そろいも揃って改造ブルドッグ・変形ダックフンド・畸形ヨークシャーテリア。「おはようございます」「おはようございます」と声を掛け合って、マナーはしっかりと。都会の公園。
 鳩と雀と鴉と犬と人。畜生だらけ。

 AM6:30
 広場の真ん中にスピーカーがあって、そこからあの曲が流れ出す。日本人なら誰でも知っている国民的歌謡。また何処からか湧いたおっさん等が、ここぞとばかりに大声で歌っている。向こうでも。そこでも。これが生きがいのように。休日でも日常を壊さずに。

 新しい朝が来た

 希望の朝だ

 喜びに胸を開け

 大空仰げ


 私は芝生に寝転んで朝日を浴びながら読書をすることにした。5月の紫外線はシャワーのように降ってきて肌を焦がすのだった。車谷長吉を読む私の足元で、蟻が巣を創っていた。 腹が減ったので開店した「棒屋」で焼きそばを買って食った。残金が520円になった。「棒屋」では誰か知らないが美人なタレントさんがメーキャップされていた。誰だったのだろうか。

 5月4日 AM10:00

 国民の休日。公園の午前。体操壮年。気孔か太極拳か知らんけどゆっくり動く外人。水道で水風呂に入っている青年。シャンプーまでしてら。ギター弾き語り。フルート。中国の、弦が一弦しかないあれ。老後の楽しみは絵描き。風呂敷広げて弁当を食う家族。中学生くらいのアイドルかなんかの撮影。そして、数百人のジョギング。
 マラソン大会みたいに数百人のジョギング。スパッツ穿いて群れ群れ。
 怖い。
 私は芝生にねっころがって持ってきた本を2冊読破した。
 芝生。
 ここの芝生は汚い。べとべとしている。空気に胃液の匂いが混じっている。蝶が居ない。飛蝗が居ない。雀やら鳩やら、情緒の無い鳥しか居ない。畸形の犬しか居ない。やはり利用人数が多すぎるんだな。この公園を「緑がいっぱい」なんて形容する人達もそうでない人たちも税金納めてそれがここの維持費になっているんだなあ。日本は平和な国だなあ。
 私は日本が大好きだ。
 仰向けになって梢を見上げて思った。
 ありがとう明治天皇。

http://maps.google.co.jp/?ll=35.676429,139.700335&spn=0.003974,0.008605&om=1

 すぐそこは明治神宮なのだ。


 AM12:00を過ぎると、私は異変に気づく。公園内に人が多いのだ。東京の人口は1200万人だとかいうのは知っていたのだが、私は1200万、という数字を全く把握できていないのだろう。「休日を代々木公園で過ごす」人が東京の人口の0.01%しか居ないとしても1200人である。多いわ。
 殺到する人々。GWに公園に出かける人、がこんなにも居るのか。何が楽しくて公園に出かけるのだ。想定外だぜ。代々木公園に殺到する人々。馬鹿じゃねえの?
 広場には居る場所も無い。パイ投げのようにフリスビーが投げられ、それを犬が追いかけている先で何部かしらないが女子中学生がエイオーエイオー言いながらジョギングしてる側で、自転車に乗る練習をする子供とそれを見守る父親にぶつかったバレーボールは何かのサークルの集団がミスして毀れたボールで、ぽれぽれと転がるボールの先にカップルがシートを敷いて淡い談笑をしながら素敵な日光浴をしている隣でホームレスが芝生に毛布を広げて干している、そうだ。青空だ。
 大空仰げ。
 吸い込まれるぞ。

 人が余りに多いので私は2泊の予定を変更し、
 吉野家で豚丼を食い、

 残金が190円になり。

 原宿のお洒落ティーンにもまれながら新宿まで歩き、
 京王線で家に帰ったのだった。

 残金60円だった。





・反省点

 昼間に予想以上の人手だった。
 予想より食費がかかる。次回はゴミ箱を漁るべきか。
 公園はあまり殺伐としていないのでつまらない。


次回、新宿西口編をお楽しみに!

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