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第76回 四国遍路編33
8月7日
まだまだ21日目
ダンプカーのおっちゃんを見送って、雨合羽を着て、また遍路を歩いている。 心の中のもかもかは、相変わらずの存在感で、困ったもんだ。 赤塚不二夫のキャラクターのように濃いイメージで、心臓に貼りついてはがれないのだ。 ぺったりとぺったりと妖怪みたいに貼りついているのだ。シールみたいに。くらげみたいに。ぺったりと。糊で。 ぺったりと。
さて、のっぴきならない現実がひとつある。 そろそろねぐらを探さなければならないということである。 台風なのである。 雨風をしのげるところで今夜は寝るようにしないと大変なことになりかねない。宿をとろうかとも思うが、金もないのでできるだけ避けたい。もとい、ここら辺はど田舎でどこに宿屋があるのか見当もつかない田んぼしか見えない。結構ピンチだ。どうするべきか。
俺はとりあえずパンを買った。 アンパンを買った。おばあちゃんが経営しているような。店に入ると誰も居なくて、商品を選んで、ごめんください、と言うと奥でごそごそ物音がして、レジのすぐ裏にあるふすまがさらりと開いておばちゃんが出てくるような、小さな個人商店で。 明日の朝飯にアンパンを買った。 明日は大嵐なのだ。世間の店はどこも閉店しているだろう。俺は頭がいいから今のうちに食料を買い込むのだ。計画性。計画性のある旅。俺は計画性のある人間。 …。 んー。
店のおばあちゃんに、ここら辺で野宿できそうなところはないかと聞く。すると、近くに道の駅があるという。手元の地図には載っていない。どうやらできたばかりの駅なのだそうだ。ということはトイレも新品だ。やっぱり情報は地元の人に聞くに限る。計画性もくそもなく、行き当たりばったりでねぐらを決めている。 俺はそれでもうれしくなってスキップしながら風の強い道を歩く。雨風に負けない野宿場所を探せそうだ。言われた道のりをるんるんして歩く。
http://www.skr.mlit.go.jp/road/rstation/station/mimab.html
すげーきれいな駅だった。田舎の田圃の中に御殿が建っている。 税金って何なんだろう、と、よそ者は思ってしまう。金の流れ方ってちょっと変だよな、って経済に明るくなくても誰でも感じる、目の前の違和。この豪華な建物、要るか? 俺みたいな、貧乏不審者くらいしか喜ばないのではないのだろうか? こんなの誰が、誰のために建てようと思うんだろう。野宿のためか? と、思いつつ、すげー助かった。 公共事業万歳。もっと日本中に旅人に優しい公共施設を作ってください、ディア国。 天候が悪いので客もほとんど居ない。俺はレストランで食事をして、きれいなトイレにシートを敷いて、ジェットコースターみたいな一日を終わりにした。 ぐっすりと眠れた。 まるで沼に沈んでいくかのように。 ずぶずぶと睡眠に落ちたのだった。 外では風がどんどん強くなっていく。嵐が本格的になっていく。あの感じを感じている。あの空気を吸っている。 雨のにおい。 夜のにおい。 トイレでね。
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