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第88回 カトマンズのカジノ 中
カトマンズのカジノに、無料でビュッフェが食えるからっつって通っていた。ラスベガスやら東京の違法カジノやらは、行ったことないけど、カトマンズのカジノなら詳しいぜ。経済力の無い国のカジノは、俺みたいな貧乏旅行人でも入場できる。そんなに広くない。多分500人も入らないんじゃないかな。俺が良く行っていた、『ヤク&イエティ』ってとこは、ルーレット台が3つあって、バカラの台が4つと、ポーカーの台とブラックジャックの台が1つずつあって、なんか場末にありそうなしょぼいゲームセンターみたいなのが併設されてて、バイキング食べられるコーナーがあって、テーブルがあって、ステージがあって、民族舞踏とか生演奏なんかが見れるようになってた。スロットとかは無かったと思うんだな。たしか。
あそこにいて思ったのは、金と女のことだけで、日々を過ごせるものなのかってこと。カジノ内で会った金持ちインド人やだらけたバックパッカーはほとんど男で、儲け話と猥談しかしていなかった。ヒマラヤのふもとの欲望の泥濘が、滑稽に積もって覆って溜まって渦巻いていた。
「俺はな、サリーを三越に卸しているんだ」と、すごいのかすごくないのかよく分からない自慢をする、変に流暢な日本語を話すネパールの財閥おっさんが、俺に話しかけてくる、「うぃ、おはよう!」午前2時。俺が、「夜はこんばんはだよ」と教えると、「俺はさっき起きたんだよ。だからおはよう、だ。がはは」と金歯を光らせて笑う。カジノで働く女性従業員を指差して、「見ろ。あの女はな、しゃぶるのがうまいんだよ。こないだヤったんだ」と大声。日本語だから、周りには通じないのだろうが、あまりのデリカシーの無さに軽く感動する。「ケーキ食うか?」と聞くので、「食う」と答えると、ホテルマンを呼び、ネパール語で何かを言うと、奥から本当にケーキを持ってきた。そのときはすげえ。と思ったが、今これを書きながら、そんなにすごくないかも、と思ったり。 そんでそのケーキがくそまずい。バターの脂がべたべたしていて砂糖の味しかしない。
☆
公園で赤い煙草に青い火をつける。紫煙がもくもくと盛り上がっていって空に。そのまま入道雲になって雨でも降らせてくれたらいいのに。と思い、俺はやけになってふうふう息をはく。哀しい色の夕空。鴉が飛んでいる。カトマンズの天気は今、どうなのだろうか。晴れているか。曇っているのか。バタフライ効果ってのがあるじゃない? 俺が今空に向けた息で、大気のバランスが崩れてヒマラヤ山脈の氷が全部溶けたりしないかしら。チョモランマがモラルハラスメントになったりしないかしら。なんて、しょうもないことを考えて、この文章も、もう書くこともあんまりないし、今日はここで終わり。「カトマンズのカジノ 下」に続きます。
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