第42回 貴乃花の失敗(後編)

 その一番は、、、貴乃花はひざに重傷を負い、誰もが決定戦出場は無理と思っていた。実際直前の武蔵丸との一番では相撲にならず、立会いだけであっさりと土俵に手をついた。立っているのもやっとというような状態に見えた。そして優勝決定戦、相手は再び横綱武蔵丸。結果はご存知のとおり、貴乃花が上手投げで勝ったわけだが、これはスポーツなら作戦勝ちということになる。武蔵丸は貴乃花の状態を見て力を入れていない。しかし貴乃花は最後の力を振り絞って一か八かの上手投げ。スポーツなら力を入れなかった武蔵丸が悪いということになる。スポーツマンシップにのっとり正々堂々と、という観点からいくと貴乃花の相撲は汚いということになるかもしれないが、ことはプロの試合だ。勝てばそれでいいという考えでいくと貴乃花は正しい。しかし相撲道でいうならば貴乃花の行為は汚いというより、「失礼」にあたる。相手は同格の横綱だ。横綱とは神である。その同格とはいえ神に対して騙しの行為を行ったわけだから、非難されても仕方ない場面ではある。ところがマスコミはもちあげるし総理は感動したというし、もうむちゃくちゃだった。こういうことをするから貴乃花は大横綱になったあとも引退したあとも、相撲界からは異端視されるし味方はいないし、運も向いてこない。本人は相撲道がうーたらこーたらいいながら、肝心の自分はまったく勝手な行動をとっているというのは大きな失敗だ。そしてもうひとつ、貴乃花は大きな失敗をしている。

 これは5年ほど前から株の世界で流れている話なのだが、貴乃花は株で失敗して大損している、という噂がある。一回ちょろっと反相撲協会の週間ポストが記事にしたことがあったが、後追い記事はなく、まあ有名人が株で失敗なんてよくある話なので盛り上がりもなくそのままだった。しかし株の世界ではそれは噂ではなくほぼ事実と断定されている。しかも詳しく調べた人がいて、いつ、どの銘柄で、どれくらい失敗したのか、ネット上ではけっこう流れていた。株に詳しい人なら、「ああ、さもありなん」と思うような典型的な失敗取引なのだが、損失の金額が桁違いなのである。少なく見積もっても5億、おそらく10億はいっているのではないか、、、という噂。しかも取引内容の推測を見てみると、ほぼ一瞬にしてこれだけの損失を計上している。買ったのは光通信という会社を信用取引で億単位。しかもITバブル崩壊直前の最高値で買った模様。たぶん誰かにそそのかされたのだと思う。「今光通信買うと2倍、3倍、いや5倍になりますよ」「どうですか、ここはひとつ私を信じて1億ぐらいのってみませんか」

 いや、別にこういうことはよくあるし、失敗なんて当たり前。だまされたともいえるけど、しかし貴乃花には運がなかった。光通信は今でも、いや今後もずっと語り継がれるだろうが、00年4月15日から続いた光通信の急落は市場がはじまって以来最悪という下げを演じた。ITバブル崩壊の引き金にもなったソフトバンクと光通信の大暴落。特に光通信は株価が高かったので被害はより大きく感じられた。なにせ2週間値段がつかなかったのである。どういうことかというと、株は買い手と売り手の提示する価格が一致してはじめて取引が成立するが、2週間売り手に見合う買い手がでてこなかったということだ。取引が成立しないから、光通信株をもっている人は売りたくても売れない。どんどん損失がふくらんでいくばかり。2週間後取引が成立したときは株価が20分の1になっていた(その後株価は250分の1にまで下がる。25じゃないよ、250だよ)。しかも貴乃花は信用取引で買っていた、つまり証券会社から資金を借りて株を買うという取引をしていたので、損失はその数倍にもなっていたはずである。ともかく貴乃花は一瞬にして人もうらやむ財産を失ったのだ。

 その頃から貴乃花の行動は明らかにおかしくなった。不仲とか洗脳疑惑とかいろいろあったけど、本職の相撲が勝てなくなったし、弱くなったし、けがも頻発、からだがおかしくなった。そりゃそうだ。一瞬にして財産を失ったら誰だっておかしくなるよ。冗談抜きでITバブルの崩壊は多くの人の財産だけでなく人生までも奪ってしまったし。こういう背景を知った上で今回の騒動を見るとまたちがった側面が見えてくるかもしれない。ともかく貴乃花はカネがない、カネがどうしても必要だ。花田勝もタレント業がいまいちでちゃんこ屋等の経営も厳しくカネは必要だろうが、ぜいたくしなければ食ってくくらいは何とかなるだろう。そうかといって遺産相続は法律にしたがって粛々と分割すべきものだからまわりがとやかくいうものでもなんだが。まあ貴乃花はどうしても遺産のほとんどを手に入れなければならないようだ。せっかく入学させた子供の学校も、景子夫人のぜいたくもこのままでは危ないのではないだろうか。法律に従って遺産を分割して得たとしても、今度は相続税の問題が浮上してくるので、そうなると今度は現金納付だから豪邸を売却しなけれならなくなるだろう。貴乃花のねらいは遺産の全額だ。まあどうやったって無理だと思うけど、これはいろいろ問題が複雑に絡み合っていて目が離せない。相撲ファンとしては、「二子山」という大看板をまともな親方に引き継いでほしいわけだが、エエ加減なんとかせえよ、北の湖理事長よぉ。相撲界まじでやばくなるぞ。

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