第73回 その後を報道しろよ

【トヨタ北米社長秘書、セクハラ被害で提訴 215億円要求】
『北米トヨタの大高英昭社長(65)の元秘書だった日本人女性社員(42)が、社長から繰り返しセクハラ(性的いやがらせ)を受けたとして、社長と同社、親会社のトヨタ自動車を相手取り、精神的な苦痛への損害賠償など計1億9000万ドル(約215億円)の支払いを求めてニューヨーク州地裁に提訴した。トヨタ側は「セクハラは決して許さない方針を貫いている」としつつも、事実関係については「係争中の裁判にはコメントできない」としている。提訴は1日付。訴状によると、秘書時代の05年秋、社長と同行した出張先のホテルの部屋や公園で体をつかまれるなどのセクハラ行為を受けたという。その後、幹部に相談をしたが、社長本人との1対1の話し合いを促される一方、事実関係の調査や処分はなく、会社が適切な対応を怠った、としている。』

 この話題を。メディアは金額ばかり煽り、感情論を垂れ流し、受け取るわれわれもそのまま鵜呑みにしがちなニュースの典型例。驚いたことに私が見ていた番組では例の、「マクドナルドのコーヒーが熱くてやけどして損害賠償で数億円受け取ったおばあさん」の話までもちだしている。先にいっておくがマクドナルドの件はでたらめ。数億円なんて受け取ってない。冷静に考えてみてくださいよ。たかが足にちょっとやけどしたくらいで億のカネ得られる国がこの地球上にあると思いますか!? あるわけないでしょ。確かに4億だったかな、賠償請求したのは報じられたとおり。あくまで請求した金額。いくら請求しようがその人の勝手。実際1審判決で3億くらいの賠償命令が出たのも事実。でもそこからはほとんど報じられていない。いちばんかんじんなところが伝えられないのである。だいたい1審判決の中身さえ詳しくは報じられていない。そもそも日本とアメリカでは裁判のシステムがちがう。こちらのものさしで見てもなんの意味もない。1審判決ですら当初は3千万円くらいだったのがマクドナルド側への社会的制裁の意味もこめて3億円くらいになったというのだから、まったくシステムがちがうのである。結論からいうとこのおばあさんがいくら得たかはわからない。マクドナルド側と和解して最終的な金額は公表されていないからだ。推測で言われていることに幅はあるがおおむね経費を引いて1千万円前後を手にしたらしい。(それでもむっちゃ高額ではあるけどねw)。

 まず民事裁判の基本は和解、話し合い。どうしてもダメなときに判決までもっていく。このやけどのご婦人の場合、もしマクドナルド側が判決を不服として控訴して裁判が長くなったら、このご婦人は裁判費用に耐えられなくなるのは目に見えている。いくら勝ち取ったって弁護士費用で消えてしまうし成功報酬だとしても多くは弁護士のものになりがち。最後まで争ったら結果として大損害になることだってある。だいたいこの裁判だって弁護士が主導してこのバカバカしい大がかりな裁判をしかけたのだろう。名前を売るためとか、カネのためとか。もちろんマクドナルド側ももともとコーヒーが熱すぎてもてないという苦情は以前からあったそうだから社会的な啓発の意味もあったと思う。でも主役はご婦人ではなくてあくまで弁護士。さて日本でもしこれと同じ裁判をやったら。日本の場合なぜ高額な請求をしないかといえば請求の金額によって印紙代が変わってくるからだ。むちゃくちゃな請求をすればそれ相応の印紙代を払わなくてはいけない。だから最初から常識的な線を出してくる。そりゃ青色ダイオードの中村教授のように億の印紙代を払ってでもというならできないことはないが。

 というわけで米トヨタの裁判だが、いま報じられている面白おかしいところを一通りかじったらマクドナルド裁判と同じように忘れ去られるだろう。そして最終的な結論は報じられない。残るのは情報の受け取り側に残る大きな誤解。バカな女、意地汚い女、信じられない国などなど。まあそこそこの金額で和解でしょうね。でもこの裁判、別の見方をすればとても面白い話。本当は誰が仕掛けたのかという陰謀話。トヨタから見れば戦うもマイナス、謝罪するもマイナス。得になることなどひとつもない。最近トヨタのアメリカでの売り上げ絶好調ですからね。これだけガソリンの値段が上がれば燃費のいい日本車に買いが集まるのも当然といえば当然なんだけど、対するアメリカの自動車会社は倒産寸前だし、そのあたりから刺客が投げ込まれたとしてもおかしくはない。黒幕は政治家もしくは政府かもしれない。いずれにしろこの訴えた女性はどこかのスパイか多額の裏金を渡されたか、そういったところでしょうね。確かに意地汚い女としてアメリカ国内でも有名になってしまっただろうけど、得たカネでどこか別の国に移住すればいいだけのこと。おいしい仕事。最後まで取材してちゃんとした報道をすればそれなりにこちらも読む気するけど、そうでないならこういう話は無視したほうがいい。メディアは視聴率がとれるか、部数が上がるか、それが彼らの唯一絶対の報道基準なのだから。

↑ページのトップに戻る↑