第6回 砂漠に一滴の雫が落ちるとき・後編

兄貴の行動がオカシイ。
携帯電話すら持っていないアナログ人のくせに、
同窓会から帰ってきてから、ずーっと 電話の受話器を取ったり、置いたり、
取ったり、置いたり、取って、置いて、取って、置いて、取って、置いて。。。
中学生女子が、初めて意中の異性に電話をかける時だって、
もう少し思い切りがいいんじゃねえか?という程、煮え切らない。挙動不審。

見ていられなくなったので、兄貴を部屋に呼び、お前のその挙動不審はなんだ?と取り調べ開始。
この犯人、むしろ自白したくてたまらない そのくせ、恋だなんだの話しをすることに異常に照れるので、
自供は回りくどい。
「高校の同窓会に行ったら、、、当時からウルサイ女子のなかで、ひとり、こう、、、ちょっと綺麗だなあというか、
 まあ、その、ちょっと、、、気になるというか、そういう女性がいたんだけれど、、、その人と、電話番号を交換したんだけれど、、、
 だから、、電話をしようと思うんだけれど、、、。」

しかも、電話番号交換をしたなんて、そんな大胆なことをよく この人が出来たもんだなと感心していたら、

「バッ!(←多分、バカっ!って、言おうとした)そんなこと俺が出来るわけねえだろ!!
 世話好きな友達が、そーゆうことしてくれたんだよ。余計なことを。。。(←絶対、思っていないくせに)」

とまあ、ヘタレで。やっぱりな、というか、なんとまあ、予想通りなわけで。

こんな(イジリ甲斐のある)兄貴の砂漠の雫が落ちるかもしれない一大事。
ほっておいたら妹じゃない。と、電話の仕方、聞く内容をレクチャー。

妹のレクチャーをメモ書きし、妹にメモを見せ、確認をして兄、その日は就寝。(健やかだなあ、お前)
ちなみに兄貴が電話をかけようか迷っていた時間は深夜2時。
とことんバカ。聞けば、マドンナは立派な社会人、出社に向けて、確実に寝とるわ!!

翌日、妹のレクチャー通り、夜8時頃、兄が電話をしているところを目撃。


うちの兄は、毎日筋トレとランニング(8km)を欠かさない(一応プロボクサー)。
筋トレ中もニヤニヤ。筋トレ後、夕飯を食べていてもニヤニヤ。気持ち悪いほどに上機嫌。
事情を知っている妹ですら、気持ち悪いのだから、事情を知らない両親は本気で気持ち悪い。
しかし、そこは親の愛。気持ち悪いとかなんとかではなく、心配になったらしく、

「あの子、、、勉強しずぎて、おかしくなちゃったのかしら。。。」
「論文、うまくいってないのかしら。。」
「変なクスリとか、、、まさか、、、?」と本気で話していた。

まあ、そんなことは面白いので、敢えて放置。

これは(ニヤニヤして気持ち悪い)兄貴を捕まえて、取り調べだな。と思っていたら、
私が尋ねる前に 兄貴がぼくの部屋に来て自白を始める。

なんと!奇跡的にも映画を観に行く約束と、メールアドレスをゲットしていた。
そして、自白中、終始笑顔の兄、締めくくりに言った台詞。

「いやあ、神様っているよね!!」

すごい。このご時世、いるだろうか。。。
たかだか電話をすること、映画の約束、メールアドレス・ゲットで、神様の存在を、こんに簡単に認める男。。。
私がキリストの伝道師・ヨハネならやってられない。そんなんでいいんかい。ぼやいてるうちにサロメもそりゃあ、首を刈るわ。
そんなしあわせな日が数日続く。

しかし、結局、兄貴がマドンナと映画に行くことはなかった。
その後のメールのやりとりの中で、マドンナには恋人がいることが分かり、
兄貴自ら、映画に行くことを断ってしまったからだ。
神様の存在まであんな簡単に認めるほど、嬉しかったくせに、なんて応用の効かない男。
話しのナガレを聞いてみたら、多分、マドンナは恋人と兄貴の間で多少、揺れていた節はあり、
いけば奇跡はゼロでもなさそうだった。

「それでも、お前を映画に行きたいと言ってくれてるんだから、奪う位の気持ちでデートすればイイじゃん。」
ぼくが、そう言っても、兄貴は折れない。

そして、兄貴の返答はこうだ。
「じゃあ、お前の恋人が、自分の知らないところで、恋人に恋愛感情を持つ異性とデートしたら、
 お前は悲しくないか?俺は、お前の助けがなければ、彼女に電話することも出来なかった弱虫だ。
 だけど、誰かを傷つけて、人道に外れてまで、己の欲望に溺れたりはしない!」
真っすぐ過ぎる。ちょっと尊敬をする、世間の若者に聞かせたい台詞だ。というか、若かりし頃の自分にもちょっと聞かせたい。

その後、彼は、以前と同じ生活に戻り、砂漠のなかで生きている。
もしかしたら、彼の砂漠に、雫は落ちないかもしれない。
けれど、ぼくは一生、忘れない。
あの気持ち悪いまでのニヤけた兄貴の「いやあ、神様っているよね!!」

そして、ぼくは思う、マドンナのとの恋が叶おうが、叶うまいが、あの台詞を吐いたあの瞬間、
彼の心という名の砂漠には、雫は落ちていたんだと。

と、なんだか綺麗にまとめてみたけど、どうでしょうか。今、テレビで映画で、小説で、「純愛だ」「泣ける恋だ」なんだかんだと色々ありますが、
純粋度で、このストーリーに匹敵するものは無いように思えます。(何がYo○hiだ、石田○良だ。○國香織なんてダイッ嫌いだ。←バレバレ)
まあ、この話しの場合、純愛ではなく純恋といったかんじでしょうか。そして、真に純な話しというのは、泣けるのではなく、笑えるものなんだなあ、、、
と 感じてしまう妹です。 

追伸、もし、この連載で うちの兄の砂漠に雫を落としてみたいという方、
(いないとは思いますが)一応、募集します。兄貴が恋をすると、面白過ぎるので。
いえいえ、この愛すべきオバカに幸せになって欲しいので。
悪いようにはしませんが、ネタにはするかもしれません。ご了承のうえ、
募集の方は こちらメールアドレスにどうぞ。→akaneco@hellolitty.com

それでは 皆様、適度に純粋な恋をお過ごしください。
だって、どっかの兄貴みたく、
純粋過ぎると実らないからさ(笑)

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