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| 最近、競馬に興味がない方でも、普通のニュースや新聞などで、ディープインパクト(以降馬名に貼っているリンクはnetkeiba.comの競走馬データベースです)という馬の名前を目や耳にしたことがあるのではないでしょうか?これまで競走馬が競馬界の枠を超えて社会現象を巻き起こしたことは、贔屓目を除けば、やはりハイセイコー(注1)とオグリキャップ(注2)の2頭の例しか無かったように思います。競馬ファンとしては数多の名馬が脳裏に浮かぶのですが…。 しかし、このディープインパクトは、紛れも無く、日本に留まらず、世界の競馬史上に名を残す空前絶
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| 後の活躍を遂げ、競馬という1スポーツ・ギャンブルの枠を飛び越えた社会現象を引き起こすポテンシャルを秘めている競走馬なのでは、と競馬ファン・関係者に夢を抱かせる競走馬なのです。
今回のrecommendは、そのディープインパクトが刻んでいくであろう輝かしい歴史を出来るだけ多くの方に目撃して欲しい、ということで、競馬好きの方が少ないように思われる(笑)「Clue」を読んでくださっている皆様に、なぜ、ディープインパクトがこれだけ騒がれているのか、ディープインパクトについての報道で必ずついてくる「三冠」というのは一体何なのか?ということについて説明させていただこうと思います(ついでに注で競馬の初歩知識について解説していますが、物凄く長くなってしまったので読み飛ばしていただいても結構です・苦笑)。
では、まず「三冠」について。野球の三冠などと同じように、この三冠というのは3つの大きなタイトルを指し示します。そして、ディープインパクトが目指している「クラシック」と呼ばれる三冠レースというのは、春に中山競馬場で行われる距離2000メートルの皐月賞、初夏に東京競馬場で行われる距離2400メートルの日本ダービー、そして秋に京都競馬場で行われる距離3000メートルの菊花賞の3レースで、全て、競馬を全く知らない皆さんでもおそらく耳にしたことがあるであろう、日本で一番馬券の売れるレースである年末の有馬記念と同じ、GT(ジーワン・グレードワン・注3)という最高の格付けのレースです。 この三冠レースというものは、実はこの3つだけではなく、国の数、地域の数だけあり、さらには雌の馬である牝馬限定の三冠などといった条件ごとにも別れていて、それらを広く説明するのはスペースを使いすぎるので省きますが(注4)、世界中に数多ある競馬の三冠レースの起源は、イギリスの2000ギニー・ダービー・セントレジャーであり、それを模倣する形で、各国の競馬においても三冠レースが創設されていった、という成り立ちは抑えておきましょう。
では、続いて、そのクラシックを1頭の馬が全て制することがどれほどの偉業なのか、ということについて検証していきましょう。 まず、大前提として、このクラシックは3歳馬(注5)しか出走できない、という年齢制限があり、これがクラシックの価値を飛躍的に高めている一番の要素と言い切っても問題ないでしょう。甲子園に大学生も参加していたらあんなに盛り上がるわけが無いですからね。そんなクラシック、中でも全てのホースマンが目標とするダービーには本場英国の宰相が実際に言ったとされる「ダービー馬の馬主になることは、一国の宰相になるよりも難しい」(注6)なんて言葉もあるくらいで、今年の日本ダービーの2着馬インティライミは、ディープインパクトにこそ5馬身(注7)ぶっちぎられはしたものの、例年なら楽勝していたに違いないという強い内容の競馬だったのですが、しかしインティライミは2度とダービーに出ることは出来ず、仮に今後成長していく中でインティライミがディープインパクトより強くなったとしても、クラシックの舞台で雪辱する機会は2度と来ないのです(まだ最後のクラシック菊花賞が残っていますが、残念ながらインティライミは故障で菊花賞に間に合わない予定です)。 そんな、クラシック三冠を全て制した三冠馬は、1941年に日本初の三冠馬となったセントライト以降、シンザン・ミスターシービー・シンボリルドルフ・ナリタブライアンの5頭しかいません。とか言いつつ、実は歴史の割には他の三冠馬よりは結構多い方(注8)なんですけどね確か…(知識不足で断言は出来ませんが、そうだったと思います。150年の歴史を誇る日本競馬からすれば少ないと言えるのですが、実はクラシック三冠レースが出来たのは昭和に入ってからなのです)。しかし何にせよとにかく難解な偉業であることには変わらないのです!! さらに、ディープインパクトに関しては、戦績以外の諸々のファクターも、マスコミのディープ狂想曲に煽りをかけている原因になっているように思います。まずジョッキーからして天才武豊。これまで数え切れない名馬に乗ってきている彼がディープインパクトに対して向ける賞賛の数々の説得力は言わずもがなでしょう。そして馬自身の超然とした雰囲気。どちらかと言えば、ナリタブライアンのような力強さとは無縁の(ブライアンが劣っているというわけではありません)、ふわふわとした感じ。必死にジョッキーが腕を前後し、鞭を振るっている他馬を尻目にゴールを駆け抜けるディープインパクトの姿は優雅そのもので見ていてため息がでるほどです。そう、ただ三冠馬の誕生、とかそういう次元とは別に、単に美しいものを鑑賞して欲しい。そんな気持ちで菊花賞の観戦を、競馬に興味がない方にも是非薦めたい気分にすらなります。ギャンブルとは別の(当然これも競馬の切り離せない素晴らしい魅力なのですが)、単にスポーツとして、イチローのヒットやロナウジーニョのフェイント、タイガー・ウッズのドライバーショットなどを見て神々しさすら感じる、あの感動を競馬でも味わえるということを、ディープインパクトの走りを見ていただければわかっていただけるような気がするのです。
そして、ナリタブライアン以来11年ぶりの三冠馬誕生に王手をかけているだけでも大変な偉業なのに、ディープインパクトはさらにここまで無敗で本番の菊花賞に歩を進めんとしているのですが、無敗の三冠馬は先述の5頭のうち、「皇帝」と呼ばれたシンボリルドルフのみが成し遂げた正に金字塔で、皇帝の牙城にディープインパクトが迫ることが出来るか、固唾を呑んで10月23日菊花賞を見守ろうではありませんか。是非、午後3時から1時間、テレビで競馬中継をつけてみてはいただけないでしょうか?そして、夢はさらに来年以降、海外へも膨らんでいくことでしょう。
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| 注1:元祖アイドルホース。地方大井競馬で6戦6勝の戦績を残した後、中央競馬に移籍。ハイセイコーが如何に生まれながらのアイドルだったかは日刊競馬のサイトでのコチラやJRAのサイトのコチラに詳しいです。さぼっているわけではなくて本当にわかりやすく状況の凄さを説明している文章なので是非。 引退後、中央入り後全レースで手綱を取った増沢末夫現調教師が歌った「さらばハイセイコー」は何と45万枚もの大ヒットを記録したというちょっと今では考えられない伝説のおまけつき
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| で、こればっかりは今後ディープインパクトがどんなに国民的な馬になろうが破れない記録でしょう。とか言ってそもそも武豊が「さらばディープインパクト」なんて歌うわけが無いんですが(笑)。
注2:これまた偉大なるアイドルホース。おそらく本質的にはスピード馬で、短距離に的を絞っていればとんでもない記録を出し続けたに違いないのですが(でもそうなっていたらこれほどの社会現象は引き起こさなかったのは間違いありませんが)、有馬記念など中長距離のビッグレースに出走し多くの伝説となるレースを魅せた名馬。ハイライトとされる引退レースの有馬記念での奇跡と呼ばれた勝利の際に手綱を取っていたのは武豊。 ハイセイコーと同じく地方競馬出身(笠松競馬)で、ディープインパクトがもし国民的なアイドルホースになったとすれば、判官贔屓の日本人が好むサクセスストーリーや栄光と挫折のコントラスト(ハイセイコーのダービー、オグリキャップのジャパンカップなど、結果、そのキャリアを俯瞰で眺めると、ということになりますが、彼らは負けることでその伝説をより強固で彩りのあるものにしています)、叩き上げの出自(ディープインパクトは生まれてくる前から期待されていた良血馬)などが一切無い、スマートで圧倒的な強さを誇る完全無欠のエリートが日本国民に愛されるという前例の無い事態になり、変な言い方ですが、僕のような競馬ファンにその可能性をホンの少しでもあると思わせられるところがディープインパクトの凄いところだと思います。
注3:競馬のレースのカテゴリーの最上位に重賞レース(グレードレース)というものがあり、重賞レースはさらに細分化され、下から順にGV・GU・GTという3つのカテゴリがあります。ディープインパクトが所属し、テレビコマーシャルも大々的に打っているJRA(日本中央競馬会)には現在年に21のGTレースがあります。 ちなみに、走りながら柵や水壕などの障害物を飛び越えながら走る障害競走(あるいは障害レース。対して、ダービーや有馬記念などのように普通のコースを走るレースを平地競走・レースと言う)もJRAでは行われており、障害競走の重賞レースは、J・GV(ジェイ・ジースリー)といったように、グレードの前にジャンプを現す「J」の文字がついており、J・GTは現在年に2レース開催されています。
注4:「contact」からメールでご要望いただければ日本を中心とした三冠レースについてのエントリーを編集長日記の方で暇を見つけて書こうと思いますので気になる方は気軽におっしゃってください。
注5:人間で言う0歳を、競走馬の場合「当歳(とうざい)」と言い、「当歳」→「1歳」→「2歳」と歳を重ねていきます。競走馬としてデビューできるのは2歳馬からになります。 ちなみに高年齢による引退制限は無く、日本における最高齢での重賞制覇はオースミダイナーが13歳(ナイター競馬で有名な大井競馬などは、JRAとは別組織のNAR(地方競馬全国協会)が主催する、所謂「地方競馬」というもので、オースミダイナーの記録は地方競馬の道営ホッカイドウ競馬でのエトワール賞にて記録したもの)で記録しており、これはおそらく今後破られることは無いのではないかと思われる偉大な記録で、馬の年齢に4をかけたものが基本的に人間の年齢になると言われており、当歳の1年を加えて4をかけると、オースミダイナーはおよそ56歳にして重賞を制したことになり(どんなレベルであれ陸上大会に50代のおっさんが出場しおまけに勝っている姿を想像してみてください・笑)、クラシックに出走できる3歳馬は人間で言うと中学〜高校生に当たり、将来があるのに故障を抱えながらも甲子園で無理をして投げるピッチャーを想像していただければ、甲子園ですら3回出れるのだから、1度きりしか出れないクラシックの価値は推して知るべしと言えるでしょう。
注6:本場英国に比べると、どうしてもギャンブルとしてのイメージの方が根強い日本の競馬ですが、河野洋平衆議院議長の父親で、自民党総裁や衆議院議長などを歴任した故河野一郎氏は、自らも競走馬を所有したほどの競馬愛好者で、男としてなりたいものを聞かれた際に、日本シリーズ優勝チームの監督と横綱審議委員会の委員長と一緒に、日本ダービー優勝馬の馬主と答えたそうです。河野氏の場合は一国の宰相にもなれなかったわけですが(笑)。
注7:読んで字のごとく、馬1頭分の着差があることで、およそ6馬身でタイムにして1秒の差になります。インティライミの場合はディープインパクトの間にはサラブレッドをおよそ5頭並べられる差があったということです。ちなみに、1馬身以下の細かい差があった場合は1馬身の4分の1単位(1/4馬身)で、3と1/2馬身・1と3/4馬身などといったように計測します。さらに、1/4馬身よりも少ない差の場合は、「クビ差」「アタマ差」「ハナ差」と順に細かい単位で表示されます。1キロ以上走っているのに何センチの世界になるハナ差での決着もざらにあるのですが、その差すらも無い場合は「同着」となり、例えば1着馬が同着となった場合には、そのまま優勝馬が2頭ということになり、2着は無くなって次点の馬は3着になります。加えて細かい着差の逆はと言うと、1着馬Aと2着馬Bの間に10馬身以上の差があった場合には「大差」と表示し、10馬身以上は仮に何分差がつこうがどこまで行っても「大差」になります。
注8:例えば、日本国内にしても、三冠のところで軽く触れた牝馬限定の三冠レースを全て制した牝馬三冠馬は、これまでメジロラモーヌとスティルインラブの2頭しかいないかったりします。
2005/9/30 ハセガワ
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